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銀行支店の閉鎖は「当然の流れ」ではない
銀行支店は近年減少傾向が続いている。銀行支店数は94年頃をピークに減少に転じ、その後下げ止まったものの増加に転じる気配はみられない(図1)。
銀行支店の閉鎖が止まらない理由は大きく2つある。一つ目はバブル崩壊に伴う業績悪化と業界再編の流れを受けたもの。二つ目はオンラインバンキングやコンビニ支払いの普及により、銀行支店以外で手続きができるようになったことにある。一つ目が銀行側の事情、二つ目が顧客側の要因で銀行支店は存在意義を失いつつある。
銀行支店数の減少は世界的な現象でもある。特にオンラインサービスの普及による近年の支店の閉鎖は「当然の流れ」との見方も多い。銀行側はオンラインサービスによって支店の営業費用が削減でき、顧客側もわざわざ支店に行く手間が省ける。銀行支店が閉鎖されても特に大きな問題はなさそうに思える。
しかし本当にそう言い切れるのか。経費削減効果とオンラインサービスの利便性に気を取られ、何か大事なものが見落とされている可能性はないのか。もしそうであれば支店数の減少は「当然の流れ」では済まされない。手遅れになる前に、長期的な顧客価値の創出という観点から銀行支店の価値を整理・点検しておく必要があるだろう。
図1 銀行支店数の推移(信金・労金除く)
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■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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