高級食パンブームに翳り 1斤1000円を超える高級食パンが注目を浴びたのが2018年頃。そこから3年ほど経った2021年頃から高級食パン店の閉店ニュースが次々飛び込んでくるようになった。特にベーカリープロデューサー・岸本拓也氏が手掛ける変わった名前の高級食パン店は21年から閉店が相次ぎ、開業から1年と経たずに閉店するケースも少なくない。高級食パンのパイオニア的存在「乃が美」でも21年オープンの店が1年を経たず閉店に追い込まれている。
翳りが見え始めた高級食パンブーム。背景にあるのは過当競争だ。1斤1000円を超す食パンを毎日のように買い続ける顧客は少ないため、お店が増え続けると供給過多で淘汰が起きる。パンの製法が疑問視されたことも大きい。高級食パンの最大の売りはふわふわ感と甘さである。ふわふわ感をもたらすストレート法と呼ばれる製法は、発酵時間が短く大量生産しやすい利点がある一方、美味しさのピークは当日で次の日から味が落ちる。材料のバターや生クリーム、ハチミツが甘さをもたらし、食パンでありながら中身は菓子パンのように感じられる商品もある。高級=素材の良さというイメージがあるなかで、この製法を知ってがっかりした消費者も多いと聞く。
コロナ禍の巣ごもり効果が一巡した影響も無視できない。コロナ禍では外出先で食べられることが多い惣菜パンや菓子パンの需要が落ち込む一方、自宅で食べる機会が多い食パンの需要が高まった。高級食パンはこうした巣ごもり消費の流れを受ける形で伸びてきたが、コロナ禍2年目の21年頃からは徐々に外出機会が増加し、巣ごもり消費も前年のような勢いはみられなくなった。21年は食パンだけでなく米の需要も頭打ちになっている。
図表1 家計の食パン・米の購入数量

高級食パンブームは終わったのか
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■ 藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
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