経済産業省は2021年11月12日、岸田文雄新内閣が講じる経済対策における関連施策の素案をまとめた。同日、自民党内で開かれた部会で示した。補正予算策定が予定されている11月19日に向けて政策の取りまとめを急ぐ。
内容は、①新型コロナウイルス感染症の影響への対応、②「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と危機管理の徹底、③新しい資本主義を実現するためのクリーンエネルギー、④地方活性化・「デジタル田園都市国家構想」、⑤経済安全保障、⑥国民の安全・安心の確保(福島の復興のための施策)の6分野になる。
これらに加えて、昨今の原油価格に代表されるエネルギー価格高騰への対応策も講じる。経済対策の具体的内容は以下の通り。
①新型コロナウイルス感染症の拡大防止
- 中小企業等の事業者向け給付金
- 地域、業種を限定しない形で、事業規模に応じた給付金の給付
- 中小企業等の資金繰り支援
②「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と危機管理の徹底
- イベント・商店街の需要喚起(ワクチン接種証明・検査の陰性証明の活用)
- コンテンツの海外展開促進、基盤強化
- ワクチン国産化に向けた戦略の果断な実行
- 平時にバイオ医薬品、有事にワクチンを製造するデュアルユース生産設備の整備支援
- ワクチン製造に必要な部素材・消耗品の製造設備の整備支援
- 創薬ベンチャーにおけるワクチンや治療薬をはじめとした新薬の実用化のための開発支援
③未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動
<成長戦略>
【科学技術立国】
- 産総研の地域センターや地域の中核大学(※)での拠点整備によるイノベーション創出機能強化
- 特定分野で第一線の研究者や研究環境、研究水準等の強みを持つ地方大学
- スタートアップ支援
- 地域の技術シーズ等を活用したテック系スタートアップの事業化支援
- スタートアップのグローバル展開に向けた環境整備
- 起業準備支援、地方のスタートアップへの経営人材支援
- 自動車の電動化の推進
- 蓄電池の国内製造基盤の確保に向けた大規模投資の促進
- 電気自動車・燃料電池自動車等の購入補助、充電インフラ・水素ステーションの整備支援
- 自動車電動化に伴う関連産業の業態転換支援
- 再生可能エネルギーの導入加速
- 再エネ有効活用に向けた系統用蓄電池等の導入加速
- 海底直流送電網の整備の加速
- 需要家主導型の太陽光発電設備の導入促進
- クリーンエネルギー戦略の策定
- 再生可能エネルギーだけではなく、原子力や水素などあらゆる選択肢を追求
④地方活性化・「デジタル田園都市国家構想」
- レジリエンス強化、データ通信の最適化等のためのデータセンターの地方拠点整備(国内立地環境整備)
- 5G投資促進税制(全国各地での5G基地局の整備促進)
- デジタル人材育成のためのプラットフォームの整備
- 社会人のデジタル知識・能力の習得に向けたポータルサイトの構築と実践的な学びの場の提供
- 中小企業等の事業再構築、生産性向上
- 売上減少要件の緩和や特別枠の設定など、事業再構築補助金等の拡充を図り、グリーン・デジタル分野を含めた成長の後押し。また、事業者の課題を設定する伴走支援を実施
- コロナ禍における債務過剰問題への対応
- 事業再構築のための私的整理円滑化のための法制整備
- 中小企業等の私的整理等のガイドライン策定
⑤経済安全保障
- 先端半導体の製造基盤確保等を促進するための法整備
- 5G法及びNEDO法の一部を改正する法律案(補正予算関連法案)
<分配戦略>
【賃上げを行う企業への支援強化】
- 大企業と中小企業の共存共栄のためのパートナーシップ構築宣言の更なる推進
【人的資本への投資、働き方改革】
【子ども・子育て支援】
- EdTech(先端的教育ソフトウェア)の活用普及による教育 DX の推進
⑥国民の安全・安心の確保
- 福島の復興
- 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策
- ALPS 処理水の海洋放出に伴う風評対策