1.はじめに M&Aに伴って、会社法上の組織再編が実行されることがしばしばある。例えば、売主側が法人の特定の事業部門のみを譲渡するために当該部門を
会社分割によって
カーブアウトしたり、また、買主側が、M&Aによって取得した法人と、他の法人とを合併させて、重複する機能を統一してコストを削減し、経営の効率化を進めたり、また、
吸収合併によって消滅会社の有する繰越欠損金を存続会社に引き継いで利用することもある。
もっとも、税務上のメリットを得ることを目的として組織再編を行う場合には、法人税法上の一般的行為計算否認規定の適用による否認リスクを十分に検討する必要がある。すなわち、一見税法上の要件を満たして適法と思われるタックス・プランニングであっても、法人税法上の一般的行為計算否認規定の適用によって、否認がなされ、税務上のメリットが得られないことがある。
特に、組織再編成に関する一般的行為計算否認規定については、平成28年2月29日の最高裁判決(注1)(以下「平成28年最判」という)で解釈が示されて以降、近時相次いで裁判例及び裁決が出されており、その内容を踏まえた対応が必要となる。
また、令和4年4月21日には、組織再編行為における同族会社の一般的行為計算否認規定の適用について判示した最高裁判決も出されており(以下「令和4年最判」という)(注2)、その内容も考慮する必要がある。
以下、各裁判例等の概要を解説し、今後のタックス・プランニングにおける留意点を説明する。
2.組織再編成に係る行為計算の否認規定について