北米戦略を推進―― 米国Atlantic Media社から子会社のQuartz社を、いわゆる逆三角合併で2018年7月に買収されました。そこで、今回の買収の経緯、買収スキームとユーザベースのグローバル成長戦略について伺っていきたいと思います。まず、Quartz社買収の経緯についてお話しいただけますか。
伊澤 「Quartz社買収の経緯にも関係しますので、最初に弊社のコア事業についてお話したいと思います。当社は08年4月に設立され、2つのコアビジネスを展開しています。1つは、企業・業界情報プラットフォーム『
SPEEDA』です。そしてもう1つがソーシャル経済メディアの『
NewsPicks』です(NewsPicksは15年4月にユーザベースから分社化)。このNewsPicks事業は13年からサービスをスタートしていまして、プラットフォーム、メディア、コミュニティの3要素を融合するという、独自のビジネスモデルを築いてきました。また、広告収入のみに依存しがちなデジタルメディアの領域において、有料課金モデルを開拓して広告売上と課金売上を両立させることに成功しています。
その成功を武器に、17年5月に、米国でニューズピックス社およびDow Jones社がそれぞれ50%ずつ出資をして合弁企業NewsPicks USA, LLCを設立し、米国市場に進出しました」
Quartz社買収の経緯伊澤 「その後、Dow Jonesとのジョイントベンチャーで米国市場での成功の手応えを感じ、本格的な米国での事業展開を進めるために、ユーザベースの共同経営者である梅田が米国で優れた編集部門を作るための人材のヘッドハンティングを始めました。日本でNewsPicksを始めた時には、佐々木(紀彦・CCO)が編集長として入社してNewsPicks事業を成功に導いたということから、米国で成功するためにも、ベストな人材に来てもらうことは米国事業が成功するためのキーファクターだと捉えていました。そこで、梅田は米国のメディア業界に詳しい人へのヒアリングも重ねながら、界隈で評価が高い人物を何十人とリストアップし、何度も断られながらもひたすら会っていくということをやっていきました。その中には今回買収したQuartz社のJay Lauf(Quartz共同社長兼発行人)、Kevin Delaney(Quartz共同社長兼編集長)も含まれていました。
Quartz社は…