[Webマール]

(2023/11/28)

新たな形態として注目高まるサーチファンド

――ファンドの総額は200億円規模に、企業への認知度向上が課題

伊藤 公健(サーチファンド・ジャパン 社長)
大富 涼(アレスカンパニー 社長)
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サーチファンドの仕組みが日本に根づくのか、注目を集めている。

サーチファンドとは、経営意欲の高い個人(サーチャー)が、事業基盤と成長余地を有しつつも承継問題を抱える中小企業を自ら探索(サーチ)し、ファンド(サーチファンド)の資金支援を受けてM&Aを実施した後、実際の経営者として企業価値を向上させる取り組みを指す。1984年にアメリカのビジネススクールで考案された仕組みで、上場や第三者への譲渡といった形で投資のイグジット(出口)を目指す。現在、日本にはサーチファンドのビジネスを手がける企業が5社ほどあり、「地域金融機関などがサーチファンドへの関心を強めている」(日本政策投資銀行企業投資第三部)とされる。

日本にこの仕組みを最初に持ち込んだのはサーチファンド・ジャパン(東京都千代田区)社長の伊藤公健氏とされる。伊藤氏は経営コンサルティングやPEファンドでの業務を経て、2014年に自らサーチャーとして中小企業のM&Aと経営を経験。2020年10月、日本政策投資銀行(以下DBJ)、日本M&Aセンター、キャリアインキュベーションとの4者合弁で同社を立ち上げた。設立から3年が経ち、「各所からサーチファンドに関する相談や問い合わせを受けるようになった」と手応えを口にする。

サーチファンド・ジャパンは、投資対象企業のサーチ段階からサーチャーに資金や知見を提供し、サーチャーが経営者になった後も支援を続ける。実務を担うのはM&Aや金融の知識が豊富な約10人(兼任を含め)で、今年10月には1件の支援案件がイグジットを迎えた。2022年3月にサーチファンドの仕組みを使い、アミューズメント施設向け景品の企画を手がけるアレスカンパニー(千葉県松戸市)の経営権を取得した大富涼氏を支援した案件で、エンターテイメント企業であるGENDA(東京都港区)への譲渡が決まった。サーチファンド・ジャパンによれば、サーチファンド型の投資を経て第三者への譲渡に至った日本初の事例(公表ベース)である。

サーチファンドの仕組みがこのまま定着し、「出口」まで到達する案件が増えていくのか。サーチファンドやファンドに出資するLP投資家、サーチャーへの認知度は高まっており、今後の重要なポイントは、特に一般事業会社においてサーチファンド活用の動きが広まるかどうかだ。

GPの株主でもありLP投資家でもあるDBJによれば、サーチファンドの普及発展に向けて大事になるのは、ひとつは成功例を作っていくことが重要だという。「サーチファンド・ジャパンでの取り組みを通じて、サーチャーの成功例を積み上げていくというのがまずは最も大事だと考えている。加えてDBJとしては、サーチファンドの事業に取り組む金融機関や事業会社に対してファンドの立ち上げ等について積極的に支援をしていきたい」(企業投資第三部)という。

今後サーチファンドの仕組みは定着するのか。今後の課題や展望についてサーチファンド・ジャパン社長の伊藤氏と、同社関与の元でサーチャーとして成功を収めたアレスカンパニーの大富涼社長に聞いた。

【図表】サーチファンド・ジャパンの概要
サーチファンド・ジャパンの概要
(出所)同社HP
<インタビュー>
サーチファンドは黎明期から発展期へ
伊藤 公健 (サーチファンド・ジャパン 社長)

伊藤氏

提案の確実性と事業価値の向上の実現性を評価

―― サーチファンドの現状と今後をどう見ていますか。

伊藤 「サーチファンド・ジャパンを設立したころを黎明期とするなら、今は少しずつプレイヤーが増えてきて、黎明期から発展期に差しかかるかどうかという段階だと思っています。立ち上げから3年が経ち、初のイグジット案件を出すことができましたが、このような成功事例が増えることを期待しています」

―― 過渡期や転換期といったところでしょうか。

伊藤 「人に投資をするというサーチファンドの仕組みや特性は認知されつつあります。今は、実際にうまくいくのか、実態はどうなのか、といったところが見られ始めていると思います。発展期を迎えるには、ここから実績を1つひとつ積み重ねていくことが重要になります」

―― サーチファンド投資家の数が増えてきている印象があります。サーチャー側と企業側、それぞれの需要や反応をどう見ていますか。

伊藤 「経営者になりたいというモチベーションはさまざまですが、サーチャー側の反響・反応は立ち上げ当初からずっと大きく、大きな手応えを感じています。一方、企業側には当初、ハードルがあったと思います。通常のファンドにも抵抗感がある中で、さらによく分からないサーチファンドの仕組みを説明するのは大変で、啓蒙や普及活動が必要だと思いましたし、そこは今も感じています。ただ、M&A仲介会社等を介して説明を受け、サーチファンドの仕組みを理解した後は反応が変わりました。ファンドへの承継には消極的だった企業から、サーチファンド型の承継なら経営者候補に会ってもいいといった反応が出てくることもあります。メディアで紹介された優秀なサーチャーを見て、こんな人がいるならうちの会社に興味を持ってくれないかなといった声が当社のウェブサイトに直接届くこともあります。さらに理解が深まれば次のステージに進めると考えています」

独立した会社として運営

―― サーチファンド・ジャパンは4者の合弁企業ですが、会社として持っている機能は現状で十分ですか。他社と組むことなどは考えていますか。



■伊藤 公健(いとう・きみたけ)
東京大学修士(建築)。マッキンゼー、ベインキャピタルを経て、日本初のサーチファンド活動を開始。ヨギーほか、中小企業への投資・支援多数。2020年にサーチファンド・ジャパン設立、代表に就任。マクロミル社外取締役。

■大富 涼(おおとみ・りょう)
一橋大学商学部、同大学院経営学修士コース(MBA)を修了。三菱商事に入社。三菱商事では在タイ子会社のターンアラウンドプロジェクトなど複数の事業投資先の管理業務などに従事。戦略コンサルティングファームのBain &Companyに転じ全社戦略策定、ポートフォリオ改革、PMI、組織風土改革、BDDなど幅広い経営支援・提言を経験。

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