前編では、Pre-DealやIn-Dealにおいて、データ&アナリティクスを活用し、投資後の事業価値向上(バリュークリエーション)の準備のためにインサイトを導出するアプローチについて解説した。今回は、Post-Deal(投資後)の段階において、実際にバリュークリエーションを実現していくにあたり、データ&アナリティクスがどのように活用できるかを概説する。
昨今、中期経営計画や成長戦略の一環としてM&Aやパートナー戦略を織り込んでいる企業は多く、数年に一度のイベントではなく、企業成長の根幹施策として継続的な投資を行っている企業も増えた。そのような企業の成長のカギは、複数の会社が存在する環境(ファンドのポートフォリオ、商社の各事業の投資先、大企業のグループ会社等も含む)において、その特性や独自の強みを発揮したバリュークリエーションをいかに実現するかにある。
データ&アナリティクスをイネーブラー※として活用するにあたっては、複数企業という環境ならではの困難さもある。企業がM&Aを行う目的は多岐にわたるが、“シナジーの創出”はひとつの大きなテーマであり、これを実現するためには複数企業を横断したデータの収集、分析、示唆出しが重要となるからである。
本稿では、こうした課題や対応策を含めて、バリュークリエーションの実現に向けたデータ&アナリティクスの活用のポイントを事例とともに述べていく。
※イネーブラーとは、バリュークリエーションを目的とした、戦略立案や施策検討、オペレーション改善などの活動を支える“推進要素”を指す
■筆者プロフィール■

渡辺 麻紀子(わたなべ・まきこ)
KPMG FAS 執行役員 パートナー
2014年KPMG入社。データの利活用や先進的アナリティクスを応用したソリューション創発とデリバリーを展開するクライアントバリューアナリティクスチームを統括。 FAS業界にて15年以上、財務・ビジネスDDからバリュークリエーションや事業戦略策定支援まで、多種多様な業界業種に対してM&Aや事業変革の場面におけるアドバイザリーサービスの経験を有する。国内FAS業界内でいち早く立ち上げたKPMG FASデータ・アナリティクス専門チームの創立メンバーであり、KPMGロンドンオフィス出向経験を生かしたグローバルソリューションの活用や前職小売企業での業務改善や製造企業の財務部での実務経験も踏まえ、クライアントに価値あるインサイトを導出するデータ&アナリティクスソリューションの進化をリードし続けている。