ラッセル・レイノルズに転じた理由 ―― 島田さんは、2002年に発足したマーサージャパン M&Aチームのパイオニアメンバーとして参画後、多国籍クライアントセグメントならびにグローバルM&Aコンサルティング部門の代表を務めました。またCOOとして、マネジメント・ガバナンス・組織・人事領域においてクライアントの成長戦略を推進し、グローバル化を目指す日本企業へのサービス拡大に注力すると共に、収益性の高い成長を支援してこられたわけですが、2021年3月にリーダーシップ・アドバイザリーとエグゼクティブ・サーチを行うラッセル・レイノルズに転じられました。この経緯についてお聞かせください。
「理由は主に2つあります。1点目は、取締役会や経営層のリーダーポジションに関して、外部と内部の両方の人を比較しながらベストな人材をアサインしていく、そういった支援がしたいと思ったことです。2点目は、日本のリーダーの発掘やその評価、育成のサポートを通じて、日本企業の国際競争力を上げていけないだろうかと思いました。
1点目ですが、マーサージャパンに在籍中、様々なM&Aの支援をしてきました。後半は日本企業の
クロスボーダーM&Aの支援が多かったのですが、海外M&Aの場合、経営層の
リテンション(人材確保)が課題になるケースが非常に多く、その時々に、既存の幹部をどうリテインするか、あるいは、そもそもリテインしないだとか、その両方の視点を持つ必要があるのではないかと常々思っていました。昨今、市場環境や需要環境が大きく変わっている中で、そういった視点がより必要になってきていると思います。
2点目ですが、特にクロスボーダーM&Aにおいて、どうしても交渉の場面で相手から言い負かされるような場面や、
PMIにおけるガバナンスマネジメントで苦労しているケースを見てきた中で、日本のリーダーをもう少し早期から発掘し、育成することができないかと強く思ってきました。
さらに、在籍中の最後の15カ月は、自身も代表取締役Interim CEO(暫定CEO)、その後COOという形で、実際そのサクセッションを経験してきました。自身がサクセッションを受けてCEOになり、かつ今度は新しく来たCEOに引き継いでいくプロセスの中で、サクセッションプランの重要性を再認識しました。オンボーディング(企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセス)するときや新たな役割へ転換するときの支援は非常に大事だと感じ、それを自身で、
ハンズオンでやりたいと考えました」
サクセッションのためのアセスメントプロセス ―― ラッセル・レイノルズではリーダーシップ領域のコンサルティングに取り組まれているということですが、具体的な内容を教えてください。
「主にCEOとその次の層の幹部を対象に、例えばCEOのサクセッションであれば、CEOのサクセッサー人材プールから発掘し、育成する支援や、全体のサクセッションプランのサポートなども行っています。
その過程の中にアセスメント(評価・分析)というプロセスがあります。対象会社の業界に精通した専門家とリーダーシップに知見の豊富なコンサルタントがチームを組み、行動心理テスト、インタビュー、360度レファレンスを取り入れた包括的なアセスメントを実施します」(図表1)
経営トップのサクセッションプランニングの全体像 「図表2は、経営トップのサクセッションプランニングの全体像です。図表1のアセスメントのアプローチと要件定義をセットで行っているケースが多いです。
まず、顧客とCEOの『要件定義の設計』を行い、これに基づいて『アセスメント』を実施します。『アセスメント』をすると、足りているところと足りていないところが見えてきます。対象者が実はPLに責任を負ったことがない人であれば、まず子会社の経営をさせるとか、組織マネジメントや人の育成の経験がなければ、そこはコーチングのような形でサポートします。それを踏まえて、人事育成計画に基づき『育成』を実施します。『アセスメント』において能力開発領域が特定されますので、身に付けるべきスキル、あるいはアサイメントによって担う役割、思考と行動など、コーチングのアプローチによって切り分けて育成プランを作っていき、実際にわれわれがコーチングする部分と外部のアドバイザーが行う部分をふるい分けます。行動については、360度レファレンスなどにより上司や周囲の人に見てもらうこともあります。
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■島田 圭子(しまだ・けいこ)
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ・ジャパン・インク マネージングディレクター
リーダーシップ領域のアドバイザリーを主に担当。日本のリーダーの成功に向けたサポートをミッションとする。
以前はマーサー ジャパンにて代表取締役Interim CEO、取締役COO、多国籍クライアントセグメント並びにグローバルM&A部門の代表等を務める。国内外の多岐に亘る業界・規模のM&Aに伴うマネジメント・ガバナンス・組織・人事領域の支援をリード。日本企業のグローバル化の支援も行う。
近年の著書に『M&Aを成功に導く人事デューデリジェンスの実務(第3版)』がある。
早稲田大学経営管理研究科非常勤講師(2020年、2021年)。
青山学院大学国際政治経済学部卒
シカゴ大学経営学修士(MBA)