[ポストM&A戦略]
2017年3月号 269号
(2017/02/15)
海外買収先経営トップのレポート先、つまり買収後の直属上司を誰とするかは、意外に重要な問題で、こちらが想像する以上に相手がこだわる可能性がある。買収交渉時、さらにサイニング後からクロージングにかけて、買い手である日本企業は、レポーティングラインについて、その時に検討可能なことを、適切なステップを踏んで前に進めているのではあるが、海外買収先経営トップの方は、「そのことは理解するが、早く決めてほしい」と苛立っていることも実は珍しくない。
今回は、主に米国の買収先経営トップのリテンションの交渉で垣間見る、レポーティングライン(上司・部下関係)の彼我の感覚の違いと、そこから派生する問題について解説する。
なぜ「買収後の自分の上司」が大事な問題なのか
買収先の経営トップにとって、買収後、自分の生殺与奪を握るのは自分の上司である。具体的には、自分に対する任免権・評価権・報酬決定権の「人事三権」を行使するのは、あるいは意思決定機関に上程するなどしたとしても「人事三権」の行使を主導するのは、ほかの誰でもない自分の上司である。従って、通常の神経の持ち主にとって、買収後に誰が自分の上司となるのかは大問題である(人事三権については、本連載第41回「M&A人事三権の確立」参照)。
このように上司の持つ力は強力であるから、もし自分と上司の間で買収後に対する具体的な考えや期待値が合わなければ、早晩大変なことになるだろう。もちろん、クロージング前に、経営目標も含めてすべて摺合せが終わっていなければこの先不安でしょうがない、ということを言っているのではない。買い手プリンシパルとの「PtoPミーティング」やリテンション時のコミュニケーションによって、「これから工夫と努力をして何とか折り合っていく覚悟はあるし、まあ、何とか折り合っていけるだろう」という基本的な安心感(Comfort)がすでに得られているからこそ、この先も勤務しよう、と考えているのである(PtoPミーティングについては、本連載第55回「クロージングに向けた経営チームのデザイン」参照)。
従って、これまで買い手のPrincipalとして各種の交渉・コミュニケーションを重ねてきた人物が買収後の自分の上司に決まる場合は、買収先の経営トップには非常にわかりやすく、安心感も高まる。早く正式に決め、早く相手に伝えるのが良い。
ところが、・・・
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