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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2019年7月号 297号

(2019/06/17)

第145回 事業売却におけるカーブアウト財務諸表作成の実務および取引ストラクチャーの検討

吉永 秀宣(PwCアドバイザリー合同会社 ディレクター)
金谷 真史(PwCアドバイザリー合同会社 シニアマネージャー)
1.はじめに

 近年、日本企業においても一部事業をカーブアウトしたうえでの事業売却を伴うM&A取引が増えてきている印象がある。これは単に不採算事業を切り出して売却するということのみならず、自社以外のリソースを用いて対象事業の成長戦略を描く、自社の事業ポートフォリオの再編という視点で捉える、なども含めた事業売却戦略が日本企業においても定着してきたことに他ならないであろう。一方で、事業売却を行う企業側の実務担当者としては、売却対象事業のカーブアウト財務諸表作成の準備に相当の時間と手間を要することを認識され始めているようである。本稿においては、カーブアウト財務諸表作成の実務について記載している。また、カーブアウト案件においては取引ストラクチャーの検討も不可欠であることから、カーブアウトにおける取引ストラクチャーについても簡単に触れておきたい。なお、文中の所見や見解は筆者らの過去の経験に基づく私見である。


2.カーブアウト財務諸表の作成プロセス

(1)カーブアウト財務諸表の意義

 カーブアウト財務諸表は、売却対象事業が切り離される際に、単独で事業運営した場合を想定した財務諸表を疑似的に作成するものである。この点、当該カーブアウト財務諸表をプロフォーマ(「調整後」や「(一定の前提に基づく)仮定の」という意味を示す。)財務諸表と呼ぶこともある。カーブアウト財務諸表は、売却プロセスにおいて、自社内の検討に用いられることは当然として、譲渡先のデューデリジェンスにおいて必須であるし、対象事業のスタンドアロンでの事業計画の基礎情報ともなる。

 また、実際に移転もしくは譲渡される資産・負債(例えば、会社分割契約の目録に記載される承継資産・負債等)や承継される取引が、対象事業のスタンドアロンの財政状態や経営成績を示していることは必ずしもなく、買い手が当該事業買収に関する事業価値評価を含む投資判断を行う上では十分に有用ではないこともあり、一定の前提・仮定に基づく調整を反映したプロフォーマ財務諸表の作成が重要となる。例えば、債権債務に関して言えば、対象事業の売却時点で存在する対象事業に帰属する売掛金であったとしても、実際の承継資産とはせず、回収は譲渡元が行うことも実務対応としてはあり得る。売掛金の債権者としては、もともと取引していた譲渡元の口座に入金を予定していたところ、当該カーブアウトにより、承継先の入金口座に変更するなどの煩雑さを回避するため等、実務的な便宜のための処置である。

(2)全体像の把握

 事業のカーブアウトが社内決定された段階で、当該事業のカーブアウト財務諸表の作成プロセスが開始される。この段階で、

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