<ポイント>
〇リーマンショック後、金融事業がソニーを支えたが、20%弱の株式持分が最適と判断
〇「事業会社内金融機関」には、事業会社の金融規制に関する理解不足等もあり、事業運営は容易ではない
〇楽天銀行は上場。事業会社が銀行を含む金融事業をグループ外に切り出す動きが広がる可能性
ソニーが金融事業を分離・独立させる意味 ソニーが5月に発表した金融事業分離のニュースに際し、市場関係者には衝撃が走った。ソニーは2020年9月、約4000億円を投じ、金融持株会社であるソニーフィナンシャルホールディングス(SFHD ・現ソニーフィナンシャルグループ)を
完全子会社化した。ソニーフィナンシャルホールディングスは、人工知能などのソニーが持つ技術と金融のノウハウを融合するための取り組みを進めており、今後のグループ内シナジーの実現が期待されている最中の発表だった。
ソニーは、5月18日の2023年度経営方針説明会で、ソニーフィナンシャルグループの株式上場を前提としたパーシャルスピンオフの意図を説明している。ニュースリリースには、『金融事業のさらなる成長を実現するために、同事業を営むソニーフィナンシャルグループ株式会社の株式上場を前提にしたパーシャルスピンオフを検討開始』とある。ソニーが活用するパーシャルスピンオフは令和5年税制改正で認められた措置で、2023年度末にかけて詳細を詰め、2~3年後の実行に向け準備を進めるという。
自社内の特定の事業部門又は子会社を切り出し、独立させる
スピンオフは、M&Aの一手法である。独立した会社の株式が、元の会社の株主に交付されることが特徴だ。日本においてスピンオフを実施しようとした場合、親会社に対し新会社に移転する資産の譲渡益が課税されると共に、株主に対してもみなし配当が課税されることが課題となっていたことから、平成29年度税制改正においてスピンオフ税制が整備された経緯がある。なおパーシャルスピンオフとは、スピンオフの利用促進の観点から、親会社に一部の株式持分(20%未満)を残した場合もスピンオフ税制の適用を認めるものだ。
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