
新型コロナ禍の下でも旺盛な投資意欲
―― 総額4億5000万USドル(約475億円)の「サンライズキャピタル4号」の募集が2020年9月に完了しました。また、4号ファンドの組成を機に「汐留パートナーズ」も設立されました。「汐留パートナーズ」設立の狙いについては、後ほど詳しく伺うとして、新型コロナ禍の下での4号ファンド募集は順調に進みましたか。
「おかげさまで、新型コロナ禍によって経済・金融環境が急速に悪化し、また対面での協議が困難になる中で、多くの投資家の皆様に出資をご検討いただき、コミットいただいた正式な金額でも600~700億円になりましたが、約475億円でクローズさせていただきました」
―― LPは金融機関が多いのですか。
「24社に出資いただき、そのうち国内が9社です。大半が金融機関と年金基金、あるいは信託銀行を通じた投資家の方々です。残りの15社が海外で、米国、EU、アジア、中東で、年金、財団、あるいはファンド・オブ・ファンズや富裕層のファミリー・オフィスに出資いただきました」
―― 今回が4号ファンドになりますが、1~3号のファンド規模は?
「1号が3億5000万ドル、2号が2億800万ドル。3号が4億ドルです」
―― これまでに何件ぐらい投資を実行してきたのですか。
「22件です。4号についてもすでに検討中の案件があります。さらに、この22社をプラットフォームにして、追加で十数社買収しておりますので、そこまで入れると40社近くに投資したことになります」
―― 日本企業への投資が基本ですね。アジアなど海外企業への投資は行わないのですか。
「基本的な投資ガイドラインは、日本企業を対象とするということになっていますが、例外枠もございまして、技術的には海外投資も可能です。しかし、ファンドの投資家からのマンデートは、日本の優良中堅企業の発展を支援することによってリターンを出すということになっていますので、よほどのことがない限り投資対象は日本企業です」
CLSAとの間で独立へ向けた合意が成立
―― 1号~3号ファンドについても、国内外の機関投資家の方からの募集という形は変わっていないのですか。
「実は、1号と2号、2号から3号では投資家の顔ぶれが大きく変わっています。これは、後ほどお話しする『汐留パートナーズ』の設立とも関係しています。
2006年に組成された1号ファンドは、香港のCLSA*と歴史的につながりの強かった米国の大口投資家をアンカーインベスターとして、かなりクラブファンド的な形で組成されました。その後、リーマンショック後に2号ファンドを組成する時には、大口の投資家も特定のファンドにあまり大きな金額は入れられないという状況になりましたので、LPについて多角化を図ろうとしたのですが、『キャプティブファンド』といわれる特定の金融グループに所属しているようなファンドの場合、機関投資家から出資対象としての評価をいただくことが難しくなってきました。それでも新たな投資家として日本で1社、ヨーロッパで1社LPに入っていただいたのですが、我々が意図したようには投資家を拡大できませんでした。そういう経緯があって、3号では実質的な独立へ向けた合意がCLSAとの間で合意されましたので、3号ファンドの組成の段階では一気に多様な投資家が国内外で増えています」
*CLSA キャピタルパートナーズ(本社:香港)は、アジア有数の総合金融機関であるCLSA傘下の資産運用部門。『サンライズキャピタル』はCLSAキャピタルパートナーズがアドバイザーを務める日本の中堅・中小企業への投資に特化した
プライベートエクイティファンドで2006年に設立された。
―― やはり、特定の所有組織の利益のために投資を行うキャプティブファンドは機関投資家に敬遠されるという流れがあったのですね。...
■きよづか・めぐみ
滋賀大学経済学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス
MBA取得。1985年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、16年間勤務。うち10年間は日本や東南アジア諸国にてM&Aアドバイザリー業務や、シンジケートローンアレンジ業務に従事。またこの間、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス(MBA)を修了。その後、2001年、カーライル・グループへ転じ、ディレクターとして主に消費財、ヘルスケア、化学、製造業等を中心とした企業のバイアウト投資に従事。そして2006年4月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。中堅企業向けバイアウトファンド「サンライズキャピタル」の立ち上げに参画し、代表取締役社長として投資活動全般の統括・指揮にあたっている。