[M&A用語]

ハーフィンダール・ハーシュマン指数

英語 :Herfindahl-Hirschman Index

略称 :HHI

■ 定義

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(Herfindahl-Hirschman Index, HHI)とは、市場の集中度を表す尺度の一つであり、該当する市場における各企業の市場シェアの2乗和として定義される。

HHIは、0(完全競争)から10,000(完全独占)の値をとり、10,000に近づくほど市場集中度が高いことを意味する。一般に、企業数が少ないほど、また各企業間のシェアの差が大きいほど(数学的には分散が大きいほど)大きな値を取る。

M&A実務との関連では、独占禁止法上の企業結合規制の審査において、競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない水準(セーフハーバー)を示す指標として用いられている。

■ 数値例

以下は、ある商品の市場において、A~E社の5社のみが存在し、それぞれ数量ベースでの市場シェアを有していると仮定した場合の数値例である。業界2位のB社と3位のC社がM&Aにより水平型の経営統合をした場合、HHIは3,250から3,850へ増加する(+600)。

このように、HHIはシェアを2乗するので、集中度が高まれば高まるほど、HHIの数値は拡大する。

 
前述のとおり独占禁止法は、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる」企業結合を禁止している。「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」における、水平型、垂直型の企業結合のセーフハーバー基準は以下のとおりである。

水平型 以下のいずれかに該当する場合
① 企業結合後のHHIが1,500以下
② 企業結合後のHHIが1,500超2,500以下かつHHI増分250以下
③ 企業結合後のHHIが2,500超かつHHI増分150以下

垂直・混合型 以下のいずれかに該当する場合
① 企業結合後の市場シェア10%以下
② 企業結合後のHHI2,500以下かつ市場シェア25%以下

(参照)公正取引委員会 「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」

したがって、前述した数値例はセーフハーバーには該当しないこととなる。


なお、経済学的な含意については、以下の文献を参考とされたい。

(1) 小田切宏之 『新しい産業組織論』 (有斐閣、2001年)
(2) 小田切宏之 『産業組織論 理論・戦略・政策を学ぶ』 (有斐閣、2019年)
(3) 長岡貞男・平尾由紀子 『産業組織の経済学(第2版)』 (日本評論社, 2013年)

用語カテゴリー:

更新日:2022年07月29日

関連記事

キーワードを入力して探す

カテゴリーで探す

五十音順で探す

※追加や必要な用語がございましたら、こちらまでご連絡ください。弊社で検討の上、反映させていただきます。

アクセスランキング