[【コーポレートガバナンス】よくわかるコーポレートガバナンス改革~日本企業の中長期的な成長に向けて~(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2019/07/11)

【第1回】 コーポレートガバナンスとは

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員)

コーポレートガバナンスとは究極のところ社長を規律づける仕組みのこと

 コーポレートガバナンスの究極のキーワードは「ディシプリン(規律)」です。市場が右肩上がりの中、企業は特に大きな失敗さえしないようにしておけば、会社も、少なくとも競合並みには右肩上がりに成長できた牧歌的な時代はもはや遠い昔話です。 企業経営に最も影響が大きい社長(CEO)の選任や、結果が出ない場合にはCEOを躊躇なく解任する仕組み、それがコーポレートガバナンスの究極の目的です。同時に、猛烈な勢いでイノベーションが求められるグローバル競争の時代に、社長が積極果敢にリスクを取るために、エンカレッジすることもコーポレートガバナンスの役割なのです。

 経営トップであるCEOを指名し、パフォーマンスを評価し、適切な報酬を支払うことによって取締役会が経営陣を監督する。これらを、誰かの一存ではなく、透明性をもって行うことがコーポレートガバナンスの要諦です。経営を監督すべき取締役を、実質的に社長が選んで連れてきたり、ましてや社長のお友達で固めていたりでは牽制の利きようがありません。それでもうまくいっている会社もあるではないかという反論はできますが、とてもこれでは長期にわたってサステナブルとはいい難いでしょう。民主主義国家でいうところの三権分立の仕組み(チェック&バランス)が効いている状態、つまり絶大な権限を持つ行政府の長である総理大臣であろうとも、立法、司法そして最終的には国民から牽制が効いている、これを企業において実装する仕組みがコーポレートガバナンスです。つまりコーポレートガバナンスとは、企業がより良いパフォーマンスをあげるための仕組み、すなわち、必要なリスクは積極的に取りながら、事業ポートフォリオを改革し、また不正・不祥事を予防し、最終的に企業価値を向上させ、すべてのステークホルダーの満足につなげる、そのための仕組みのことなのです。その目的のために日本企業/経営者は具体的にどのようなことに取り組むべきなのか、このシリーズで見ていきたいと思います。


(取締役会の責務)
次回第2回では、取締役会の果たすべき役割と責任についてみていきたいと思います。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴
汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/テクノロジー/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社など幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略面での支援や、M&A戦略策定に始まり、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験を持つ。特にクロスボーダーM&Aやカーブアウト買収といった複雑で難易度の高い案件を数多く手掛けている。また、日系企業による海外企業の買収を契機に、その後のグローバル化に向けたトランスフォーメーション支援や、買収後の海外企業のターンアラウンド、ガバナンス改革などの案件も支援している。東京大学工学部卒。






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