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[【コーポレートガバナンス】よくわかるコーポレートガバナンス改革~日本企業の中長期的な成長に向けて~(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2019/09/12)

【第4回】 事業ポートフォリオマネジメントを支えるコーポレートの在り方と経営インフラ

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員)

One Company Principle


 事業ポートフォリオマネジメントに必要なコーポレートの役割の一つ目は、事業間、法人間での情報の遮断や個別最適を防ぐためのOne Companyとしての組織設計です。

 事業の特性にももちろんよりますが、グローバル化しているとされる日本企業においてよくみられる発想は、「親会社vs子会社発想」もしくは「本社vs現地法人的発想」といえると思います。つまり、日本企業の多くは会社別あるいは国別(法人別にといってよいでしょう)に組織が構築されており、それぞれの法人別に社長がいて、P/L、B/Sに責任をもち、それなりの投資権限も与えられたガバナンスが実装されていることが通常です。いわばOne CompanyではなくMulti Companyになっているのです。従って、グローバルでの全社最適を考えるべきシェアードサービスや、情報システムといった投資・方針に関しても各法人の社長の権限が強く、得てして個別最適に陥りがちです。皆さんの会社においても、米国や欧州のトップは役職の高い方が務められているのではないでしょうか?もちろん、子会社・現地法人の格にもよるものの、一般的に各法人の社長のステータスは高く、実質的な権限はかなり大きいはずです。こういった方々のミッションはまずはその法人のP/LなりB/Sを守ることですから、本社がいくら全体最適を叫んで投資の負担を要請しても、こういったトップを説得することはかなり骨の折れる作業です。かくして、多くの日本企業においては、子会社・現地法人のそれぞれの意思決定が積み上がって全体ができあがるという、大変ちぐはぐなガバナンスモデルとなってしまっています。

 一方で欧米のグローバル企業では本社機能が極めて強い権限を持ち全社最適を考えることを前提に組織設計されています。むしろ法人は単純に財務や税務の効率性だけを考えて登記されており、誰がどこの法人に属しているかはほぼ意識しない形でレポートラインが定義されていることが通常です(そもそも子会社や現地法人の代表者自体が形式的であることも多いと思います)。

 組織を設計する際には、大きく、地域×事業×機能の3軸があって、地域を中心に組織が成り立っているのが日本企業、事業と機能を中心に成り立っているのが欧米企業といえると思います。事業ポートフォリオマネジメントを行うためには、事業の縦軸と機能の横軸が強くなければなりません。地域別の組織・レポートラインは地域戦略が重要な営業ぐらいで、あとは機能軸を強化したOne Companyとするのがまずは重要です。

長期に見渡す。周りをよく見る。デジタルに評価する。


 事業ポートフォリオマネジメントにおいて二つ目に重要な点は、事業を一律で評価する仕組み(評価軸)です。ヒト・モノ・カネの資源配分に大胆に傾斜をつけようというのが事業ポートフォリオマネジメントですから、潜在的に多くの軋轢が存在しています。場合によっては事業売却にもつながるわけですから、事業ごとの成績表を作るにあたって、企画部門や財務部門の苦労はよく理解できます。ただし、ここから逃げていては、相変わらず成り行きで経営を進めているだけになってしまいますから、どのような基準でそれぞれの事業を評価するかは極めて重要な論点です。

 まず、やるべきことは時間軸を長く(最低10年以上)とり、長期に見渡すことです。ここで重要となるのは、未来を予測するというより、どんな未来を作っていきたいか、という視点です。企業として抗えない社会・経済・技術・政治に関するメガトレンド(人口動態の変化や気候問題意識の高まりなど)を踏まえはするものの、そもそも企業として、どのような未来を作っていきたいか、そこに自社であればどのように貢献したいかというWillが最も重要になります。これがないとそもそも事業を評価するための基本的な軸が定まりません。これがまず事業ポートフォリオをマネジメントしていく上での大前提です。

 そのうえで、次に考えるべきことは、短中期的に競…




デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴
汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/テクノロジー/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社など幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略面での支援や、M&A戦略策定に始まり、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験を持つ。特にクロスボーダーM&Aやカーブアウト買収といった複雑で難易度の高い案件を数多く手掛けている。また、日系企業による海外企業の買収を契機に、その後のグローバル化に向けたトランスフォーメーション支援や、買収後の海外企業のターンアラウンド、ガバナンス改革などの案件も支援している。東京大学工学部卒。

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