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[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2018年3月号 281号

(2018/02/15)

ベインキャピタルの担当者が明かす「アサツーディ・ケイTOBの経緯と今後」

広告業界第3位

西 直史(ベインキャピタル プリンシパル)   2017年12月、米投資ファンド運用会社ベインキャピタル(以下ベイン)は、傘下のビーシーピーイー マディソン ケイマン エルピーがTOB(株式公開買い付け)によりアサツーディ・ケイ(以下ADK)株式の87.05%を取得した。取得総額は約1326億円。今後いわゆる2段階買収によって全株式を取得する方針で、すでに3分の2超の議決権を得ており、ADKは18年2月に臨時株主総会を開催し、3月下旬にも上場廃止となる。

  ADKグループは、子会社 49 社、関連会社 11 社等で構成され、主な事業は、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、デジタルメディア、OOHメディア(Out Of Home Media:電車やバスの中吊り等の交通広告、ビル の壁面に設置した看板等の屋外広告、折込広告等)を媒体とする広告業務の企画と取扱い、広告表現及びコンテンツの企画と制作、セールスプロモーション、マーケティング、パブリックリレーションズ等のサービス活動を行っている総合広告会社で、売上高で電通、博報堂に次ぐ業界3位の位置づけとなっている。

  同社は、1956年に旭通信社として設立され、東京証券取引所市場2部上場を経て90年6月に第1部銘柄に指定され、その後、99年1月に第一企画と合併して商号を現在のADKに変更した。また98年8月には、持続的な成長及び企業価値 の向上を目的として、世界の広告代理店業界において売上高で第1位の WPP グループとの間で、資本・業務提携契約を締結、これによってWPPはADKの24.96%を保有する筆頭株主となっていた。

  同社にTOBを実施したベインは、グローバルで総額約 750 億ドルの運用資産を持つ国際的投資会社。06年に東京拠点を開設し、日本ではジュピターショップチャンネル、すかいらーく、大江戸温泉物語、ドミノピザ・ジャパン、マクロミル、ベルシステム24 など 12 社に対して投資実績を持っており、18年3月に予定されている東芝メモリ買収の「日米韓連合」の中心的な存在としても注目されている。

WPPグループとの資本提携関係解消を図ったADK

  ADKがベインによるTOBで非上場化という道を選択した背景には、筆頭株主であるWPPグループとの資本提携関係解消によって成長を加速させたいとの経営陣の思いがあった。

  同社を取り巻く事業環境は、デジタルテクノロジーの劇的な進化やソーシャルメディアの急速な浸透もあって、マスメディアを中心とした日本の広告市場が成熟期に入り、 広告を含むコミュニケーションは、単なる商品・サービスの認知を高める手段から、消費者の購買やサービス利用など「消費者を動かす」という課題を解決する手段へと大きく変貌してきている。他方、経済成長ポテンシャルの大きい東南アジア諸国への進出を目指す日本のクライアントからの対応ニーズが、大幅に増加してきている。こうした広告業界を取り巻く急速な経営環境の変化に対応するために、同社は13年、同社の20年までの成長の過程を示した中期経営計画「VISION 2020」を発表し、「コンシューマー・アクティベーション・カンパニー」への変革を宣言した。

  この中計では、①短期的には既存ビジネスの収益性改善、②中期的には新業態を開拓するための多様な専門性の強化を2本柱として、16年12 月期までを第1ステップとして 基盤構築・構造改革期と定め、変革に取り組んできた。しかし、目標としていた16年度の営業利益70 億円に対して、実績は 56 億円と、収益性の改善が不十分で、多様な専門性の強化についても、広告業界の市場環境の変化が想定以上に急速に進む中で、より一層の事業革新と組織改革に迫られる状態になっていた。

  こうした中で、WPPとの資本・業務提携は開始当初こそコーポレートガバナンス体制の整備や資金の効率運用などの面で一定の成果を生んだものの、その後は、ADKにとって事業上のシナジーを実現するには至らず、むしろ、「子会社でもないADKに対して自らの利益を優先してくるところが大きかった」と、提携解消を決断した理由をADKの植野伸一社長は語っている。

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