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[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]

2014年7月号 237号

(2014/06/15)

第61回 『経営者としての姿勢』

 神山 友佑(デロイト トーマツ コンサルティング)

【登場人物】  山岡ファイナンスサービス社と渋沢ファイナンスコーポレーション社は、1カ月後に経営統合を迎えようとしていた。そんな中で発表された新会社の役員体制は、誰もの予想を超えた内容であり、社員だけではなく競合他社や市場からも大きなインパクトを持って受け止められた。
  山岡FS社の野澤博人社長と渋沢FC社の飯塚良社長は「経営統合の最後の重大局面に至った」と判断し、二人揃って全社員の前に立つと、新会社のステートメントを発信した。

両トップによる共同ステートメント

  野澤社長と飯塚社長の共同でのメッセージ発信は、多くの社員の心に変化をもたらしていた。これまで自社の社長の声は年2回の方針発表等で聞いてきたが、経営統合相手会社の社長から直接メッセージを受け取ったのは初めてであったのだ。
  しかも両社社長が互いに信頼し合い強い絆で結ばれているという雰囲気が、発言の間合いやしぐさから強く感じられた。社長という最大の権威者同士が互いに手を取り、そして高いレベルで整合しかみ合ったメッセージが発信されたことで、実感値として「我々は経営統合するのだ、一つの会社になるのだ」ということを従業員は感じた。
  また過去1カ月にわたり社内外での様々な噂や憶測に晒され、会社上層部に対する不信感も少なからず漂っていたが、経営者二人の明快かつ論理的な語り口はそれらを払しょくするのに十分なものであった。なぜ社長が交代するのか、なぜ取締役会議長を社長でない人物が務めるかなど、多くの従業員は違和感なく納得して聞くことができた。
  一方で飯塚自らが説明した自身の病について、渋沢FC社の従業員は強いショックを受けた。相談役として新会社に残る形だが、しばらくは治療に専念しなくてはならないという。渋沢FC社の親会社銀行から新たな人物が社長として送り込まれてくるが、どんな人物であるかもわからない。多くの従業員は一瞬「自分たちの後ろ盾がなくなってしまう」という不安を覚えた。
  しかし飯塚に寄り添い、深い信頼関係で結ばれた野澤の姿を見ると、不安感も一定程度減じられる気がした。野澤は経営統合の産みの苦しさを知る人間として、取締役会議長の立場から両社の融合を司る役目を担うという。通達文書や社内報だけでの説明であれば、「所詮形式的な説明だ」というように、共感や納得感を得ることは難しかったであろう。しかし両社長がそろって登場し、そして相談役に退く飯塚が、「なぜ野澤が取締役会議長に就任するのか」を説明したことで、従業員は「なるほど」というように自然と理解し腹落ちすることができた。

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