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[【事業承継】中堅中小企業の事業承継M&A ~会計税務の実務上の頻出論点~(M&Aキャピタルパートナーズ)]

(2019/08/29)

【第3回】 株式の事前の取りまとめ時における税務上のポイント及び非上場株式の時価の考え方

桜井 博一(M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報第二部 公認会計士・税理士)


はじめに


 第2回では株式譲渡対価の一部として役員退職金を支給する際の実務上のポイントについて解説しました。


 今回も実務上よく論点となる、M&A実行前の株式の取りまとめ時における税務上のポイントについて解説します。

 対象会社の株式が複数の株主に分散している場合に、買手会社が株式の100%をまとめて取得しやすくするため、代表の株主(売手の社長など)がM&A実行前に他の株主の株式を取りまとめた上でM&Aを実行することがあります。

また、自身の譲渡益を最大化するために、M&A実行前に、他の株主から株式を安く買い取りたいといった要望や、M&Aの検討と並行して分散した株式を集約しておきたい、といった相談も実務上多々あります。

 こういった株式の取りまとめに際しては、実務上、「株式をいくらで買い取るべきか」という株式の時価評価と、それに伴う税務リスクの検討が重要となります。

 非上場株式は上場株式のような客観的な株式の時価が存在しないため、税務上、複数の時価の算定方法や考え方があり、関係当事者や売買のタイミング次第で、どの方法を用いるべきか判断が求められます。

 この判断を誤ると、様々な税務リスクが発生し、結果的に売り手の手取り額(税金額)に大きな影響を及ぼす可能性があるため、十分な検討が必要となります。

 本稿では、株式を取りまとめる方法に合わせ、株式の時価の考え方について、整理・解説していきます。

 ※なお、株式の評価方法は非常に複雑なため、本稿では詳細な計算方法には触れず、ポイントのみ解説します。

株主が分散している場合の主な契約締結方法と株式の取りまとめが必要なケース


  まずは、株式の取りまとめが必要なケースを把握するために、株式譲渡契約の締結方法について代表的なものを整理したいと思います。株主が分散している場合、株式譲渡契約の締結方法には、主に下記のようなパターンがあり、そのパターンによって株式の取りまとめが発生するケースと発生しないケースにわかれます。

パターン1:買手会社が株主全員と個別の契約を締結

パターン2:買手会社が株主全員とひとつの契約を締結

パターン3:売手の代表の株主が他の株主から委任状(代理権限)を受領し、代表して契約を締結

パターン4:売手の代表の株主が事前に株式を取りまとめた(買い取った)上で契約を締結

パターン5:対象会社が事前に株式を取りまとめた(自己株買いした)上で契約を締結



  





 上記パターンのうち、売手Aが第三者である買手会社と合意したM&Aの株価にて売手B・Cに譲渡対価が支払われた場合、株主間で譲渡対価に大きな差異を生じさせる特殊な要因等がなければ、株式の取りまとめに関して特段の税務上の論点が発生することはありません。

 一方、パターン4もしくは5は、代表の株主もしくは対象会社が、M&Aを実行する前にその他の株主から株を買い取るケースにつき、当該買取価額が必ずしも買手会社と合意しているM&Aの株価とは限らず、いくらで株式を買い取るか(自己株買いするか)、という株式の時価評価とそれに伴う税務リスクの検討が必要となります。

 なお、株主数が多い場合は、パターン4もしくは5により一部の株主より株式を買い取った後、パターン1~3のいずれかと組み合わせてM&Aを実行することもあります。

 ※本稿では株式の議決権50%超を保有する同族会社であることを前提とします。

 非上場株式の時価(評価方法)の種類

 非上場株式の時価算定には、主に下記のような評価方法があり、どの評価方法を採用するべきかについては、実務上、関係当事者の属性などに応じて、一定のルールが存在します。

1. 純資産価額方式
2. 類似業種比準方式
3. 1と2の併用方式
4. 配当還元方式


 なお、上記の評価方法にかかわらず、第三者と合意形成した取引価格、いわゆるM&Aの株価もその時価の1つといえます。

 1~3は一般的に相続税法の財産評価基本通達における「原則的評価額」と呼ばれるもので、実務上、非上場株式の時価を指すときは、この原則的評価額が用いられることが…


■筆者経歴
桜井 博一(さくらい・ひろかず)
大学在学中に公認会計士試験に合格後、卒業後は三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。中堅中小企業向けの融資業務や再生支援業務等を経て、株式会社KPMG FASにて中堅・上場企業向けの財務・事業デューデリジェンス業務を中心としたM&Aアドバイザリー業務に従事した後、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社に参画。物流業界を中心に、飲食業界、アミューズメント業界等、幅広い中堅中小企業のM&A仲介業務に従事している。 

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