2024年も終わりを迎えようとしていた12月27日、ニデックは牧野フライス製作所への同意なき
TOBを発表し、世間を驚かせた。同社の発表によると牧野フライス側へは事前接触すら行っていないという。2023年のTAKISAWAへの同意なきTOBから、さらに一段踏み込む形となった。
同意なき買収は、これまで業績や成長性に明示的に課題がある企業との交渉決裂時の最終手段と考えられてきたが、今後は
企業価値を高めるという理由があれば予告なく引かれるレバーとなっていくのか――。いずれにせよ、リスクとチャンスの両面でM&Aの経営上の重要性が増している。
サプライズの中で2025年を迎えた機械業界だが、レコフデータによると2024年のM&Aは161件と前年150件を上回る活況となった。連載第3回となる本稿では、機械業界を取り巻く環境を解説したうえで、業界のM&Aトレンドとして重要な「多角化」「垂直統合・ソリューション化」に焦点を当てて、それぞれの特徴や背景、2025年の展望について見ていきたい。なお、本稿ではコンプレッサー・減速機を含む一般機械、工作機械・ロボット・ファクトリーオートメーションを含む産業機械、建設・農業機械等の企業を念頭に論を進める。
機械業界に押し寄せるM&Aの波――外部環境の変化と株式市場からのプレッシャーが後押し
機械業界の事業環境は、技術革新、地政学リスク、インフレ、顧客ニーズの変化、サステナビリティへの意識の高まり等、変化がより速く、大きくなり、不確実性が増している。こうした中、従来型のモノづくりを軸としたオーガニックな成長では変化に対応しきれなくなってきている。
これまで日本の機械関連企業は、ある程度の営業利益をあげて配当を維持できていれば株主から信頼を得られていた。しかし、
■ 筆者履歴

赤崎 夏未(あかさき・なつみ)
プリンシパル
BCGトランザクション&インテグレーションチームのコアメンバー。産業財・自動車グループ、およびコーポレート・ファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。北海道大学法学部卒業。タフツ大学フレッチャー法律外交大学院、およびHEC パリ 経営大学院修了(MBA)。三菱商事株式会社を経て現在に至る。東京・ミュンヘンオフィスにて、機械・オートメーション業界を中心に、M&A・企業変革・ポートフォリオ戦略・新規事業開発などを数多く支援。
【連載】第7回・完 2025年、M&Aの展望――プライベートエクイティ